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グローバル・トゥー・ジェイ代表インタビュー【後編】

金融翻訳の業界動向

−金融翻訳の世界に入ってから9年近くになりますが、この業界で大きく変わったことはありますか?

「大きく分けて二つあります。一つは外注需要の増加です。この傾向は1990年代後半頃から顕著になったようです。古い付き合いのある業界関係者の話によれば、1990年代前半頃まで各外資系金融機関のほとんどは社内で翻訳していたそうです。それが、大手外資系金融機関全体の方針としてコスト削減のために社内翻訳者を置かない、または少人数体制にするようになった結果、外注の割合は1990年代後半で30〜40%、2000年以降で90%以上、現在ではほぼ100%と変わってきているようです」

−つまり、以前に比べて翻訳会社やフリーランス翻訳者は仕事を獲得できるチャンスがかなり増えているということですね。もう一つは何でしょうか?

「もう一つは、インターネットの普及です。私がフリーランス翻訳者になってから2000年頃までは、原文の受領方法はファクスが中心でした。中にはPDFファイルなどの原文をEメールに添付して送ってくださる依頼主もいましたが、少数派でしたね。ところが、インターネットが急速に普及した2000年頃を境に、原文はデータで送付されるケースが増えていったのです」

−ファクスの場合、紙送りの調子が悪くなると原文の全ページを受領できなかったり、文字がつぶれて判読しづらかったりと面倒なこともあるでしょうし、データの方が便利ですね。

「確かにそうですね。私自身、ファクスで受領した原稿を見て『5』と『6』、『8』と『9』などの区別がつかず、依頼主に確認したことはよくありました。この分野では数字をうっかり一つ間違えただけでもおおごとですから。あと、原文の受領方法以外に、情報の配信方法も変わったと思います。例えば、外資系金融機関が発行する投資家向け調査レポートの翻訳版は印刷物として郵送するよりも、データとしてEメールや投資家限定のウェブサイトで配信する方法が業界の主流になってきています」

−Eメールやウェブサイトによってスピーディーな情報配信が可能になったことで、何か変わったことはありますか。

「よりタイムリーな情報を顧客に提供するため、レポートの中心はウィークリー、デイリーへと変わってきています。四半期レポートなどの翻訳需要がまったくないわけではありませんが、以前に比べてかなり減ってきていますね。また、納期もインターネットの普及に少なからず影響を受けていると思います。当社がある外資系証券会社から定期的に受注しているマクロ経済ウィークリーレポートを例に挙げると、以前は1週間近くあった納期が、Eメールやウェブサイトで配信されるようになってから3日に短縮されました」

−翻訳する側にとってはプレッシャーですね。

「ええ。金融翻訳業界では以前にも増してスピードが要求されています。これはベテランにとっても厳しい状況ですが、そうした業界の変化に対応できなければ、この世界で生き残っていくのは難しいでしょう」

求められる金融翻訳者像

−それでは、金融翻訳業界で求められる翻訳者像を教えてください。

「この業界で必要なのは、優れた翻訳力と常識的なビジネスマナーを兼ね備えた方です。優れた翻訳力とは、金融知識が豊富であることに加え、英文読解力、日本語文章力、そしてリサーチ力のすべてが総合的に高いということです。このうちのどれか一つでも劣っていると、いい翻訳をするのは難しいでしょう。また、言うまでもありませんがビジネスマナーは社会人として身につけておくべきですね。在宅翻訳者の募集活動をしていると、びっくりするような対応をする応募者に出会うことも少なくないので、あえて挙げました」


−どんな方が金融翻訳の仕事に向いているのでしょうか。

「何よりもまず、翻訳が好きな方ですね。翻訳が好きであれば、いい仕事をするための努力を惜しまないはずですから。稼ぐことだけを目的に質の高い仕事をしようとしても限界があるものです。また、金融・経済に興味があり、調べ物が苦にならない好奇心旺盛な方もこの仕事に向いていますね。実際、私が知っている優秀な翻訳者は、分からないことがあれば放置せずにインターネット検索で調べたり、関連書籍をせっせと読むなどして解決する方がほとんどです。あと、言葉に敏感なことも少なからず重要ですね」

−具体的にはどういうことでしょうか?

「以前、コモディティ関連レポートの訳文を編集していた時のことです。原文のweatherという単語を担当翻訳者は『気候』と訳していたのですが、私は『天候』にすべきだとすぐに気づきました。念のため、それぞれの言葉の意味を国語辞典で確認してみると、『天候』は比較的短い期間の天気の総合的な状態、『気候』はある土地で1年を周期として繰り返される大気の総合的な状態、とありました。問題の部分はそのレポートが発表された前週の天気について触れていたことからも、『天候』と訳すべきなのは明らかでした。このように、似たような言葉でも厳密には意味が異なるため、使い方に注意する必要があります。自分の選んだ言葉が適切かどうか常に意識しながら取り組むことが大切ですね」

−実際の仕事ではどのような能力や姿勢が要求されるのでしょうか。

「やはり、完成度の高い訳文に仕上げる注意力と責任感ですね。翻訳は綿密な作業の連続です。指定された翻訳スタイルの順守や訳語の統一、数字や単位の確認、過去の仕事と同じ間違いを繰り返さないなど、当たり前のことを徹底しなければ質の高い訳文は生まれません。また、思ったより翻訳が難しく、スケジュール的に厳しくなったような場合でも納期は守り、限られた時間内で高品質の訳文に仕上げるために最善を尽くす責任感も不可欠です。いい仕事をするためには、常に完璧を目指すプロ意識が重要なのです」

−最後に、この業界全体をよく知る立場から、金融翻訳者を目指す方へのアドバイスをお願いします。

「翻訳者になるためには、翻訳が好きであることが何よりも大切です。その『好き』という気持ちを、いい仕事をするための原動力にうまく変えられれば、翻訳力は格段に向上すると思いますね。もし、今の自分の翻訳力に課題があると感じている場合、まずはその一つひとつをクリアしていくことから始めてみてください。それができれば、おのずと道は開けてくるものです。プロになるまでには色々な苦労があるかもしれませんが、金融翻訳者を本気で目指す方には是非、この世界に飛び込んできてほしいですね」

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