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グローバル・トゥー・ジェイ代表インタビュー【前編】

今月から2回にわたり、「グローバル・トゥー・ジェイ代表インタビュー」をお送りします。
前編では、金融翻訳を始めたきっかけや、金融・経済翻訳講座を開設した理由などについて話してもらいます。


金融翻訳を始めたきっかけ

−まずは、金融翻訳業界に入ったきっかけを教えてもらえますか。

「日経新聞のロンドンとニューヨークの現地法人で通算4年ほど金融・経済記者をしていました。記者としての仕事は充実していましたが、4年目を迎えた頃から『何か新しいことを始めてみたい』という思いが強くなり、それなら自分には何ができるのかと考えてみたところ、翻訳業を思いつきました」

−なぜ、翻訳業だったのですか。

「現地の金融機関から新聞社宛に送られてくる資料の中には、マクロ経済や金融市場動向に関する調査レポートを日本語に翻訳したものがありますが、その内容を改めて見てみるとクオリティが高いとは言い難いものが多く、これなら自分の方がうまく訳せる、翻訳のニーズはある、と確信したからです。以前から事業を起こしたいという夢があり、それをいつか実現したいと考えていたので、ちょうどいいビジネスアイデアが見つかったと思いました。でも、すぐに会社を設立するよりもまずは自分で翻訳をやってみて、仕事が軌道に乗ったら会社組織にする計画を立てました」

新聞記者の経験

−翻訳で食べていこうと思っても、計画をすぐに実現するのは難しいと思うのですが、翻訳業を始める前に翻訳の学習をしたことはあるのですか。

「こう言っては驚くかもしれませんが、この仕事を始める以前、意識的に翻訳の学習をしたことはないのです。ただしもちろん、何もせずに翻訳力が身についたわけではありません。いい翻訳をするためには原文を正しく解釈し、それを自然な日本語に置き換える『変換力』が重要ですが、今思えばこの力は新聞記者時代に培われたものだと思います。取材対象者とのコミュニケーションは英語が中心だったので、まずは相手が英語で説明したことを正確に理解し、その内容をもとに日本語で記事を書く作業をしていました。それが『変換力』をつける上で大いにプラスになったと思います。海外で記者の仕事をしたからこそ、経験できたことですね」

−記者の仕事で最も印象に残っているのはどんなことですか。

「やはり、初めて原稿の執筆をまかされた時のことですね。それは、ある金融機関から送られてきた英語のプレスリリースをもとに記事を書く仕事でした。原稿は先輩記者にチェックしてもらったのですが、あっという間にあちこちに赤字を入れられ、最終的には自分の文章は跡形もなく消えていました」

−かなり驚いたのではないですか。

「そうですね。でも、赤字原稿を見て、なぜ直されたのか納得がいきました。学生の頃にレポートや論文などを書く経験はありましたが、文章を書く本格的な訓練は受けたことがなかったので、当然の結果だったと思います。日常生活で意思疎通を図れる程度の文章と、プロとしてお金がもらえる文章とでは、レベルが違うということですね。その後もしばらくの間、記事を書いては先輩記者に直してもらう経験を繰り返し、教えられたことをとにかく素直に吸収していきました。振り返ってみると、優秀な指導者に文章を書く基本を教わり、手本となるいい文章に触れる機会があったからこそ、上達も早かったのだと思います」

フリーランスを経て会社設立へ

−自分で翻訳をやろうと決心した後、まずは何をしたのですか。

「当時の人脈を利用して顧客の開拓から始めました。最初の顧客は、東京の外資系証券会社の英国人ストラテジストでした。その方から、債券関連のウィークリーレポートを日本語に訳してくれる人を探しているという話を聞き、そのレポートの翻訳を私に担当させてほしいと頼んだのです。トライアルを受けた結果、訳文のクオリティを認めていただき、その仕事を獲得することができました」

−早々に依頼主を見つけられてよかったですね。

「ええ。仕事の目処がついたので日経新聞社を退社し、帰国後はそのストラテジストのウィークリーレポートをレギュラーで担当することになりました。うれしいことに、その日本語版レポートを読んだ他の部署の方からも翻訳を依頼されるようになり、仕事は徐々に増えていったのです。自分だけでは対応し切れず、新聞記者時代の同僚の手を借りて何とか処理することもしばしばでした。しかしながら、同僚も本業があるのでいつでも引き受けてくれるとは限りません。フリーランスでの仕事が多忙を極めた頃、会社組織として始動する時期がきたと判断し、2000年に念願の翻訳会社を立ち上げました。フリーランス翻訳者に転身してから約2年後のことです」

翻訳者の公募

−2000年に会社を設立後、登録翻訳者はどのようにして探したのですか?

「翻訳者や翻訳者を目指す方々のための会員制ネットワークの協力を得て公募しました。応募者数が多かったので、かなり期待しました。ところが、提出された訳文を見てみると、残念なことにこちらの要求水準に達しているものが少なく、思っていたほどの人数は確保できませんでした。それでも、指導をすれば上達しそうな方が数人見つかったので、安心しましたが」

−合格者の属性に傾向は見られましたか?例えば、金融機関での実務経験者が多かったとか?

「合格者は外資系金融機関の出身者が中心になるだろうと思っていました。金融知識は当然ありますし、英語も得意なはずですから。ところが、実際には主婦や塾の講師、システムエンジニアなど、金融とはまったく畑の違う方が多かったので意外でした。合格者全員に共通していたのは、翻訳学習歴があったことです。翻訳講座などで基本をしっかり学んだ方の訳文のほうが、比較的読みやすく、自然な日本語の文章に仕上がっていました」

−なるほど。合格者は初めからある程度の実力があったのですか。

「一定レベル以上の翻訳力のある方ばかりでしたが、中には金融分野特有の表現を把握し切れていない方もいました。これはきめ細かに指導する必要があると思いましたね。そこで、一つの仕事が終わると必ず、その案件を担当した翻訳者に訳文の最終版ファイルをフィードバックとして送り、改善点を指導するなどして個々の更なるレベルアップを図りました」

金融・経済翻訳講座の開設

−2000年に翻訳会社を設立後、2002年に「金融・経済翻訳講座」を開設していますが、その理由を教えてもらえますか。

「ある時、実務を通じて蓄積した金融翻訳のノウハウを登録翻訳者の個別指導だけに利用するのはもったいないと感じたからです。また、いい人材がなかなか見つからないなら自分で育成すればいいという気持ちもありました。『金融・経済翻訳講座』で基本を身につけた方が将来的に当社に登録してくれれば即戦力になりますし、優秀な翻訳者を輩出することでこの業界の翻訳水準の底上げに少しでも貢献できると思いました」

−ノウハウを教材の形にまとめ上げるのは並大抵ではなかったと思いますが。

「そうですね。金融翻訳で必要な基礎知識と翻訳技術を、初心者にも分かりやすい内容に仕上げるには工夫が必要でした。そういう意味で苦労はしましたが、教材にはこの分野の翻訳者を目指すなら必ず押さえておいてほしい要点が凝縮されているので、効率よく学習できる構成になっています。また、演習問題の英文は、当社が実際の仕事で顧客から提供された文書を参考に社内で作成したものですし、訳例も現場で求められる品質とスタイルに仕上げたものなので、『生の金融翻訳』が学べるいい素材だと思います」

後編に続く

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